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No.1(05.10.24 掲載 )関西芸術文化協会は,解散するのがいい法 林 喬 二
(関西クラシック音楽情報 編集人) 関西芸術文化協会が、文化庁、大阪府、大阪市の助成金を不正に受給していたという報道があり、関西の楽壇をさわがせている。ことのいきさつはこうだ。昨年秋、それまでの理事長 野口幸助さんのあとをうけ、あたらしく理事長に就任した大川進一郎さんが協会の経理を精査させたところ、オペラ公演の衣装・小道具代などの納入業者に、架空の領収書を作らせ、経費を水増しし、文化庁の助成金を受け取っていたことが判明、これが文化庁の知れるところとなったというもの。新聞社の取材により、大阪府・市からも、同様な手口で助成金を不正に受け取っていたということも判明した。 ごていねいなことに、水増しした経費は、寄付金などの名目で協会に戻入されており、遊興など不正に使われたわけではないらしい。「しょせんオペラは赤字」「どこもやっていること」「どっちみちオペラに使ったんだし…」という声はもっともに聞こえるが、文化庁、大阪府、大阪市の立場からすると、不正に受け取ったということは否定できず、返還を求めたいというのも当然だ。 困っているのは、いわば瑕疵ある物件を引き継がされたも同様の大川進一郎さんだが、それにも増して困っているのは、おなじオペラ団体の関西二期会であろう。「おまえンんとこもか」といわれるだけでもつらいのに、ひょっとすると助成金がもらえなくなるかもしれないという不安もある。公的助成だけでなく、企業や個人からの寄付も集めにくくなる。関西二期会だけではない、関西のオーケストラも、いろいろな音楽団体も、不安がいっぱいだという。 そもそも関西芸術文化協会は、1957年に「関西芸能教育協会」として設立された財団法人を、1990年に野口幸助さんが理事長に就任し、現在の名称にあらためたもの。野口さんは、ながらく関西歌劇団の運営に関わってきたが、関西歌劇団には法人格がない。法人格がないと公的助成が受けられない。しかし、あらたに財団法人を作るとなると、数億の基金が必要ななる。そこで、休眠状態にあったという財団の理事長に就任し、関西歌劇団の運営母体とすることによって、公的助成が受けられる道が開けたというのだから、野口さんらしい素晴らしいアイディアであった。 しかし、経費の3分の1を限度に赤字が補填されるという助成金には、システムとして問題が多い。いかにも合理的なようだが、経費が節減されると助成金も削減される。ならば、経費が少なくすんでも、決算は当初の計画通りにしておくのが得策である。できるだけ助成金を多く受け取るためには、費用がかかり、赤字が多いように見せかける必要がある。そこに、経費を水増ししようとする背景がある。関西芸術文化協会は、その手法にしたがっただけだ。 かといって、関西芸術文化協会を擁護することはできない。不正受給には相違ない。助成金のもとは税金であり、使い道には透明性が求められる。支出を水増しして助成金を増やすという手法は、むかしは通用したかもしれないが、いまや許されない。「どっちみちオペラに使ったんだし…」というにいたっては、不謹慎きわまりない。付言すれば、関西芸術文化協会には多くの著名人が理事として名を連ねているが、もし今度の事件が、詐取として立件されることなれば、理事の責任はまぬがれない。社外取締役より役に立たなかったのだろうか。 さらにいえば、助成金を出す側も、計画書・見積書に重点をおくだけでなく、決算の精査や、成果の評価にも注目してほしいものだ。 さて、この事態をどう収拾するか。助成金の返還を求められるのは当然であろう。しかし、大川さんの顔をうかがうのはいかがなものか。大川さんは、関西フィルを30年にわたって支えてこられたひとで、そのために使ったお金は数億円にのぼるといわれている。さりながら、それとこれとは別問題。大川さんには、なんの責任もないし、ましてこの返済が、将来の希望につながるものではない。過去のしがらみを断ち切るために、財団法人 関西芸術文化協会は、解散するのがいい。 団員数百人という関西歌劇団はどうするか。もともと歌劇団は任意団体だった。それが野口さんに連れられて、財団法人 関西芸術文化協会の傘下に入っただけだ。ならばこの際、もとの任意団体に戻る、いや、これも過去と訣別するために、「新・関西歌劇団」に衣替えすることが望ましい。近ごろは、法人格がなくとも助成金を受けることができる。どうしても法人格が必要なら、NPOという方法もある。そのとき、大川さんを理事長に迎えることもできよう。団員の総意で、これからに対処するのが望ましいというものだ。 関西のオペラ界はここ数年、関係者の努力で「オペラ界は西高東低」という評判を得るところまでいっていた。それが今回の事件で、「ああ、やっぱり関西や」といわれるのはなげかわしい。関西の文化活動をやりにくくしたことは否めない。文化庁、大阪府、大阪市も、どうしたら合理性のある助成ができるか、真剣に考えてほしい。そして、河合隼雄 文化庁長官の提唱する「関西から文化力」が、実のあるものになるよう努力したいものだ。 ● ご感想、ご意見があれば、「編集人へのメール」でお知らせください。 ● 「オピニオンのページ」に寄稿を歓迎します。要項は《こちら》 |