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No.2(05.11.21 掲載 )関西歌劇団は、再出発を急げ法 林 喬 二
(関西クラシック音楽情報 編集人) 「関西芸術文化協会は、解散するのがいい」を掲載してから1ヶ月が経過する。毎日600人の読者があるサイトだから、さぞや反応があるかと期待していたが、案に相違して届いたメールはA氏と匿名氏の2通だけ。掲載直後には毎日数百人、いまでも数十人がこのページを訪れるのに、意外だった。 口頭で感想や意見を聞いたひとからは、「穏健」「手ぬるい」「もっと厳しく」という声が多く聞かれた。もっとも、これらのひとは音楽関係者がほとんどなので、意見としては偏っているかもしれない。しかし、そこで聞かれた声は、ほとんどが体制に対する批判で、なかには「解散」ではなく、「破産すればいい」といい放つというひともいるほど。それほど今回の事件は、それを生んだ土壌や背景に、多くの問題をかかえているかということを示している。 それを端的に伝えるのが、匿名氏のメールである。 ……………………………………………………………………………………… よくここまで、お話をしてくださったなと思います。夢を持って音楽の道を志した若者が、 どれほどに高いチケットを売るために、バイトと練習で、疲れて去って行った事か。 死をも選んだ友も見てきました。一度潰して、若い感覚で、新しいものを作って、欲しいです。 ……………………………………………………………………………………… 確認のメールを送ったが「尋ね当たらず」で戻ってきた。発信人がどんなひとか知るよしもない。しかし、これを書いたひとが、どれだけ悲痛な思いで歌劇団と向き合ってきたか、この短い文章の中から読み取れる。今回のできごとが、単なる不祥事にとどまらない、というのはここである。 関西のオペラ界が注目を集めるようになったのは、いつごろからであろうか。ザ・カレッジ・オペラハウスが、1999年9月、黛 俊郎の「金閣寺」東京公演を行い、その成果もひとつの理由となって、2000年7月に「第30回 モービル音楽賞」を受賞している。そのあと、芥川也寸志の「ヒロシマのオフフェ」をはじめとする20世紀オペラシリーズの公演、2003年11月、松村禎三の「沈黙」、2005年10月、同作品の再演、さらには東京公演、いまや松村禎三の「沈黙」は、ザ・カレッジ・オペラハウスのレパートリーかというほど実績をあげている。 ここで重要なことは、これらの公演は、ザ・カレッジ・オペラハウスの企画によるものではあるが、関西二期会、関西歌劇団に所属する歌手が大きな力になっていることである。また、西日本各地では市民オペラの活動がめざましいが、これらを支えているのは、やはり、関西二期会、関西歌劇団に所属する歌手である。それらは、歌手個人の活動とはいえ、歌手がひとりで存在するのではなく、関西二期会、関西歌劇団という団体の活動が、それら歌手を育て、関西でオペラを上演する土壌を作ってきたのである。 不祥事があったからといって、その片方である関西歌劇団が消えてしまっていいのか。商店街で、競合店の片方が閉店したからといって、残ったほうは喜んでおれない。街はさびれるだけだ。遠のいたお客は戻ってこない。 はからずも10月27日、関西歌劇団の「ラ・ボエーム」を観た。それは見事なできばえだった。歌い手の熱演だけではない、群衆の子供ひとりひとりにまで目が届いた演出、簡素だけど要を得た舞台装置、そして全体にみなぎる緊張感、終演後のお客には、満足感がたっぷりとうかがえた。やればできる、これを絶やしてしまっていいのか。いろいろ考えさせられながら会場をでた。 上述のA氏のメールにはこうある。「結論として解散が妥当という点では全く同感です」に続けて、 ……………………………………………………………………………………… 大して才能があるとも思えない20年前と変わらないような出演者の名前が並んだ定番の演目では、 チケットを買う気ならないのが正直なところです。スター不在、新鮮味がない、芸術的な刺激が 期待できそうもない、そういう聴く側のイメージは強く・・(略)・・ ……………………………………………………………………………………… たしかに、このとおりの意見を多く聞いたものだ。だからこそ、やればできるという感を深くする。 文化庁・大阪府・大阪市と関西芸術文化協会が、どのように事態を収拾するのか、第三者がとやかくいう立場にはない。しかし、助成金のもとは税金だ。みんなが納得できる解決をはかってほしい。本来この助成金は、もし関西芸術文化協会が交付を受けなければ、ほかにもらったであろう個人・団体がたくさんある。返還するとしても、そのまま国庫に収納されるのは、いかがなものであろうか。 関西芸術文化協会にも、せっかく経費節減をしたのに、それを返せとは不合理だとか、いろいろといいぶんがあろう。しかし、この際は、関西オペラ界の火を消さないためにも、早急かつ妥当な解決をはかってほしい。オペラの公演は、一般のひとには想像しがたいだろうが、6千万円から1億円はかかる。どうしても、官民の助成や寄付がなければ成り立たない。関西芸術文化協会は解散すればいいが、残された関西歌劇団が再出発し、関西のオペラ界を育てていくには、おかしなしこりは残してほしくない。 もうひとつ。今度の不祥事は、関西の音楽関係者に多大な迷惑を与えている。疑いの目でみられたり、同列に扱われたり、不愉快というばかりでなく、活動をやりにくくしているのは事実だ。関西芸術文化協会の大川進一郎 "現" 理事長も、じつは迷惑を被ったひとりであろうが、ここは組織の代表として、関係者に謝ってほしい。これは仕方のないことだ。 さらにもうひとつ。関西歌劇団には、所属しているけど団費の滞納をしている団員が多いという。以前にも、団費の徴収を強化した理事がいたが、団内のあつれきで理事を辞任したという。今回も、団費の徴収強化が背景にあったという。なぜ団費を払わないか。歌劇団に所属していても、あまりメリットがない、それだけの意義を感じない、退団しようにも引き留められてやめられない、等々と理由があるらしい。それにしても、徴収を強化しようとしてあつれきになるのはなぜか。じつは、徴収を強化すると退団者が続出するおそれがある。なんと、ここにも水増しがあったのかと、疑いたくなる。あえてこのことにふれるのは、冒頭にあった「それを生んだ土壌や背景に、多くの問題をかかえている」ということを明らかにしたいからだ。 この際、関西歌劇団は、過去のしがらみを断ち切って、新しい体制で再出発してほしい。それも一刻も早く。いつか不祥事のことは忘れられるだろうとかいう考えはやめてほしい。ほんとうにオペラを愛し、やる気のあるひとだけが集まってやればいい。匿名氏は、メールでこういっている。 「一度潰して、若い感覚で、新しいものを作って、欲しいです。」 ● ご感想、ご意見があれば、「編集人へのメール」でお知らせください。 ● 「オピニオンのページ」に寄稿を歓迎します。要項は《こちら》 |