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No.3(06.5.13 掲載 )

どうなる、大阪の4オケ大合同

法 林 喬 二 
(関西クラシック音楽情報 編集人)


 関西経済連合会の秋山喜久会長が、「大阪の4オケ大合同」を提言して1ヶ月あまり経つ。すぐに、「そりゃないでしょう、秋山さん」と書こうかと思ったが、ウラの構図が透けて見えてきたので、書くのをやめた。しかし、時間も経過し、議論も一巡したので、ここでいちどふれておきたい。

 ウラの構図とはなにか。提言の趣旨は、「楽員の年収が2-4百万円と低い」、「府・市・経済界から年11億円も支援しているのに、オケは4つもあって非効率」、ということだという。これを聞いて、まず2つのオケは、たいへん違和感を感じたらしい。公的支援については、前々から不公平感を持っている。「億」の支援など、枠の外だからだ。もうひとつのオケも、なんの相談もなく俎上にあげられ、困惑そのもの。指揮者人気とはいえ、チケットは完売つづきという好調で、水を差されるのも甚だしい。と考えると、問題をかかえるのは、残りのひとつだ。ここは大阪府の文化振興基金からの補助金でかなりの費用をまかなっている。この基金が底をつくのもあと数年という。なんのことはない、大阪センチュリーの問題が、「楽員の年収が低い」とか、「オケは4つもあって非効率」とか、いかにも正論のようなことにすり替えられているのだ。

 いや、どのオケも楽ではない。楽員の年収が低いのも事実だ。年収2百万円でも、音楽がやりたくて、その熱意でなんとかやっているのが現実だ。それには敬意を表したいほどだ。その楽員は、4つのオケで280人ほどいる。ひとつにしたらどうなる。まず180人ほど失業する。その失業者はどうする。集まって新しいオーケストラを作る。音楽の世界とはそういうものだ。
 オーケストラは、ことばは適切でないかもしれないが、熟練技術者を集めた労働集約産業なのだ。算盤にはあわない。熟練技術者を100人集め、それにしては低すぎるが、年俸4百万円を払うと、4億円が必要になる。これで年間100ステージ出演するとして、1ステージの出演料4百万円・・もらえる例は少ない。そこで、50人、2百万円、1億円という規模にして、1ステージ1百万円、これなら可能性あるか。とはいうものの、演奏会自体、かりに5千円で1千枚チケットが売れて5百万円。このなかから、ホール代から指揮者の費用から音楽著作権料まで、全部まかなうのだから、なみ大抵のやりくりではない。
 楽員には、いささか蒐集癖がある。だれの指揮で、どの曲を演奏したか、克明に記憶・・記録している。悪いことではない。演奏意欲の表れといってよい。しかし現実には、いつも新しい曲というわけにはいかない。おなじ曲を繰り返して演奏しても、お客さまにはいつも新鮮に聞こえるようにしなくてはならない。楽員も指揮者も、置かれている環境をよく承知して、それなりの努力をしているのだ。それに、ときには100人を超えるオーケストラで演奏してみたいものだ。オーケストラは、どうしても膨張する傾向がある。そこで苦肉の策というか、2オケ合同演奏会が登場する。変則的にはみえるが、お客も満足、楽員も満足なら、それもいい。
 それやこれやで、大阪のオーケストラは苦労しながら、生き延びてきた。ここ数年、オーケストラの演奏会は、来場者が増えている。オーケストラの技術も向上している。それにも増して、お客さまのレベルがとても上がっている。それに、「またお越しください、お待ちしてます」とステージからいってのける指揮者とか、学校訪問で指揮をして、「奉仕じゃない、投資なんです」といってのける指揮者とか、それぞれ懸命の努力をしているのだ。

 そういう状況を知ってか知らずか、単純に「4つは非効率」というのは、いかがなものであろうか。文化とか芸術というものは、もともと非効率なものだ。いざ問題がおこると、癒しだとか、カウンセリングだとか、心のケアだとか、声高にいうわりには、そういう精神文化を支えるものを、経済性だけで議論するのは、なじまない。しかも、大阪センチュリーの問題を解決するために、ほかの3つの引き合いにだすのは、納得できない。それに加えて、「11億円も支援している」というのは、強い立場のものが、弱いものいじめをしている図式だ。
 今回の提言に対し、「関西には、経済団体が3つも4つもあるじゃない」という声があった。それぞれ立場をかえれば、非効率はやまのようにある。オーケストラの非効率など、いえたものではない。それに、もっと非効率なものがある。大阪湾には空港が3つもある。どれもが問題をかかえている。オーケストラの非効率を議論するなら、そっちのほうを考えてほしい。だいいち "桁が違う" でしょう。

 大阪センチュリーはこの問題に、どう対処しようとしているのだろうか。

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